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15 Documentation/process/howto.rst
18 翻訳者: Tsugikazu Shibata <tshibata@ab.jp.nec.com>
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23 ==========================
25 これは上のトピック( Linux カーネル開発のやり方)の重要な事柄を網羅した
26 ドキュメントです。ここには Linux カーネル開発者になるための方法とLinux
27 カーネル開発コミュニティと共に活動するやり方を学ぶ方法が含まれています。
28 カーネルプログラミングに関する技術的な項目に関することは何も含めないよ
29 うにしていますが、カーネル開発者となるための正しい方向に向かう手助けに
32 もし、このドキュメントのどこかが古くなっていた場合には、このドキュメント
33 の最後にリストしたメンテナにパッチを送ってください。
38 あなたは Linux カーネルの開発者になる方法を学びたいのでしょうか? そ
39 れとも上司から「このデバイスの Linux ドライバを書くように」と言われた
40 のかもしれません。この文書の目的は、あなたが踏むべき手順と、コミュニティ
41 と一緒にうまく働くヒントを書き下すことで、あなたが知るべき全てのことを
42 教えることです。また、このコミュニティがなぜ今うまくまわっているのかと
45 カーネルは少量のアーキテクチャ依存部分がアセンブリ言語で書かれている以
46 外の大部分は C 言語で書かれています。C言語をよく理解していることはカー
47 ネル開発に必要です。低レベルのアーキテクチャ開発をするのでなければ、
48 (どんなアーキテクチャでも)アセンブリ(訳注: 言語)は必要ありません。以下
49 の本は、C 言語の十分な知識や何年もの経験に取って代わるものではありませ
50 んが、少なくともリファレンスとしては良い本です。
52 - "The C Programming Language" by Kernighan and Ritchie [Prentice Hall]
53 - 『プログラミング言語C第2版』(B.W. カーニハン/D.M. リッチー著 石田晴久訳) [共立出版]
54 - "Practical C Programming" by Steve Oualline [O'Reilly]
55 - 『C実践プログラミング第3版』(Steve Oualline著 望月康司監訳 谷口功訳) [オライリージャパン]
56 - "C: A Reference Manual" by Harbison and Steele [Prentice Hall]
57 - 『新・詳説 C 言語 H&S リファレンス』 (サミュエル P ハービソン/ガイ L スティール共著 斉藤 信男監訳)[ソフトバンク]
59 カーネルは GNU C と GNU ツールチェインを使って書かれています。カーネル
60 は ISO C89 仕様に準拠して書く一方で、標準には無い言語拡張を多く使って
61 います。カーネルは標準 C ライブラリに依存しない、C 言語非依存環境です。
62 そのため、C の標準の中で使えないものもあります。特に任意の long long
63 の除算や浮動小数点は使えません。カーネルがツールチェインや C 言語拡張
64 に置いている前提がどうなっているのかわかりにくいことが時々あり、また、
65 残念なことに決定的なリファレンスは存在しません。情報を得るには、gcc の
66 info ページ( info gcc )を見てください。
68 あなたは既存の開発コミュニティと一緒に作業する方法を学ぼうとしているこ
69 とに思い出してください。そのコミュニティは、コーディング、スタイル、開
70 発手順について高度な標準を持つ、多様な人の集まりです。地理的に分散した
71 大規模なチームに対してもっともうまくいくとわかったことをベースにしなが
72 ら、これらの標準は長い時間をかけて築かれてきました。これらはきちんと文
73 書化されていますから、事前にこれらの標準について事前にできるだけたくさ
74 ん学んでください。また皆があなたやあなたの会社のやり方に合わせてくれる
80 Linux カーネルのソースコードは GPL ライセンスの下でリリースされていま
81 す。ライセンスの詳細については、ソースツリーのメインディレクトリに存在
82 する、COPYING のファイルを見てください。もしライセンスについてさらに質
83 問があれば、Linux Kernel メーリングリストに質問するのではなく、どうぞ
84 法律家に相談してください。メーリングリストの人達は法律家ではなく、法的
85 問題については彼らの声明はあてにするべきではありません。
87 GPL に関する共通の質問や回答については、以下を参照してください-
89 https://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.html
94 Linux カーネルソースツリーは幅広い範囲のドキュメントを含んでおり、それ
95 らはカーネルコミュニティと会話する方法を学ぶのに非常に貴重なものです。
96 新しい機能がカーネルに追加される場合、その機能の使い方について説明した
97 新しいドキュメントファイルも追加することを勧めます。
98 カーネルの変更が、カーネルがユーザ空間に公開しているインターフェイスの
99 変更を引き起こす場合、その変更を説明するマニュアルページのパッチや情報
100 をマニュアルページのメンテナ mtk.manpages@gmail.com に送り、CC を
101 linux-api@vger.kernel.org に送ることを勧めます。
103 以下はカーネルソースツリーに含まれている読んでおくべきファイルの一覧で
107 このファイルは Linuxカーネルの簡単な背景とカーネルを設定(訳注
108 configure )し、生成(訳注 build )するために必要なことは何かが書かれ
109 ています。 カーネルに関して初めての人はここからスタートすると良い
112 :ref:`Documentation/process/changes.rst <changes>`
113 このファイルはカーネルをうまく生成(訳注 build )し、走らせるのに最
114 小限のレベルで必要な数々のソフトウェアパッケージの一覧を示してい
117 :ref:`Documentation/process/coding-style.rst <codingstyle>`
118 これは Linux カーネルのコーディングスタイルと背景にある理由を記述
119 しています。全ての新しいコードはこのドキュメントにあるガイドライン
120 に従っていることを期待されています。大部分のメンテナはこれらのルー
121 ルに従っているものだけを受け付け、多くの人は正しいスタイルのコード
124 :ref:`Documentation/process/submitting-patches.rst <codingstyle>` と :ref:`Documentation/process/submitting-drivers.rst <submittingdrivers>`
125 これらのファイルには、どうやってうまくパッチを作って投稿するかにつ
126 いて非常に詳しく書かれており、以下を含みます (これだけに限らない
133 これらのルールに従えばうまくいくことを保証することではありません
134 が (すべてのパッチは内容とスタイルについて精査を受けるので)、
135 ルールに従わなければ間違いなくうまくいかないでしょう。
137 この他にパッチを作る方法についてのよくできた記述は-
140 http://www.ozlabs.org/~akpm/stuff/tpp.txt
141 "Linux kernel patch submission format"
142 http://linux.yyz.us/patch-format.html
144 :ref:`Documentation/process/stable-api-nonsense.rst <stable_api_nonsense>`
145 このファイルはカーネルの中に不変の API を持たないことにした意識的
146 な決断の背景にある理由について書かれています。以下のようなことを含
149 - サブシステムとの間に層を作ること(コンパチビリティのため?)
150 - オペレーティングシステム間のドライバの移植性
151 - カーネルソースツリーの素早い変更を遅らせる(もしくは素早い変更を妨げる)
153 このドキュメントは Linux 開発の思想を理解するのに非常に重要です。
154 そして、他のOSでの開発者が Linux に移る時にとても重要です。
156 :ref:`Documentation/admin-guide/security-bugs.rst <securitybugs>`
157 もし Linux カーネルでセキュリティ問題を発見したように思ったら、こ
158 のドキュメントのステップに従ってカーネル開発者に連絡し、問題解決を
161 :ref:`Documentation/process/management-style.rst <managementstyle>`
162 このドキュメントは Linux カーネルのメンテナ達がどう行動するか、
163 彼らの手法の背景にある共有されている精神について記述しています。こ
164 れはカーネル開発の初心者なら(もしくは、単に興味があるだけの人でも)
165 重要です。なぜならこのドキュメントは、カーネルメンテナ達の独特な
166 行動についての多くの誤解や混乱を解消するからです。
168 :ref:`Documentation/process/stable-kernel-rules.rst <stable_kernel_rules>`
169 このファイルはどのように stable カーネルのリリースが行われるかのルー
170 ルが記述されています。そしてこれらのリリースの中のどこかで変更を取
171 り入れてもらいたい場合に何をすれば良いかが示されています。
173 :Ref:`Documentation/process/kernel-docs.rst <kernel_docs>`
174 カーネル開発に付随する外部ドキュメントのリストです。もしあなたが探
175 しているものがカーネル内のドキュメントでみつからなかった場合、この
178 :ref:`Documentation/process/applying-patches.rst <applying_patches>`
179 パッチとはなにか、パッチをどうやって様々なカーネルの開発ブランチに
180 適用するのかについて正確に記述した良い入門書です。
182 カーネルはソースコードそのものや、このファイルのようなリストラクチャー
183 ドテキストマークアップ(ReST)から自動的に生成可能な多数のドキュメントを
184 もっています。これにはカーネル内APIの完全な記述や、正しくロックをかけ
187 これら全てのドキュメントを PDF や HTML で生成するには以下を実行します - ::
192 それぞれメインカーネルのソースディレクトリから実行します。
194 ReSTマークアップを使ったドキュメントは Documentation/outputに生成され
195 ます。Latex とePub 形式で生成するには - ::
201 ------------------------
203 もしあなたが、Linux カーネル開発について何も知らないのならば、
204 KernelNewbies プロジェクトを見るべきです
206 https://kernelnewbies.org
208 このサイトには役に立つメーリングリストがあり、基本的なカーネル開発に関
209 するほとんどどんな種類の質問もできます (既に回答されているようなことを
210 聞く前にまずはアーカイブを調べてください)。またここには、リアルタイム
211 で質問を聞くことができる IRC チャネルや、Linuxカーネルの開発に関して学
212 ぶのに便利なたくさんの役に立つドキュメントがあります。
214 Web サイトには、コードの構成、サブシステム、現在存在するプロジェクト
215 (ツリーにあるもの無いものの両方)の基本的な管理情報があります。ここには、
216 また、カーネルのコンパイルのやり方やパッチの当て方などの間接的な基本情
219 あなたがどこからスタートして良いかわからないが、Linux カーネル開発コミュ
220 ニティに参加して何かすることをさがしているのであれば、Linux kernel
221 Janitor's プロジェクトにいけば良いでしょう -
223 https://kernelnewbies.org/KernelJanitors
225 ここはそのようなスタートをするのにうってつけの場所です。ここには、
226 Linux カーネルソースツリーの中に含まれる、きれいにし、修正しなければな
227 らない、単純な問題のリストが記述されています。このプロジェクトに関わる
228 開発者と一緒に作業することで、あなたのパッチを Linuxカーネルツリーに入
229 れるための基礎を学ぶことができ、そしてもしあなたがまだアイディアを持っ
230 ていない場合には、次にやる仕事の方向性が見えてくるかもしれません。
232 もしあなたが、すでにひとまとまりコードを書いていて、カーネルツリーに入
233 れたいと思っていたり、それに関する適切な支援を求めたい場合、カーネルメ
234 ンターズプロジェクトはそのような皆さんを助けるためにできました。ここに
235 はメーリングリストがあり、以下から参照できます -
237 https://selenic.com/mailman/listinfo/kernel-mentors
239 実際に Linux カーネルのコードについて修正を加える前に、どうやってその
240 コードが動作するのかを理解することが必要です。そのためには、特別なツー
241 ルの助けを借りてでも、それを直接よく読むことが最良の方法です(ほとんど
242 のトリッキーな部分は十分にコメントしてありますから)。そういうツールで
243 特におすすめなのは、Linux クロスリファレンスプロジェクトです。これは、
244 自己参照方式で、索引がついた web 形式で、ソースコードを参照することが
245 できます。この最新の素晴しいカーネルコードのリポジトリは以下で見つかり
248 http://lxr.free-electrons.com/
253 Linux カーネルの開発プロセスは現在幾つかの異なるメインカーネル「ブラン
254 チ」と多数のサブシステム毎のカーネルブランチから構成されます。これらの
258 - 4.x.y -stable カーネルツリー
260 - サブシステム毎のカーネルツリーとパッチ
261 - 統合テストのための 4.x -next カーネルツリー
266 4.x カーネルは Linus Torvalds によってメンテナンスされ、
267 https://kernel.org の pub/linux/kernel/v4.x/ ディレクトリに存在します。
270 - 新しいカーネルがリリースされた直後に、2週間の特別期間が設けられ、
271 この期間中に、メンテナ達は Linus に大きな差分を送ることができます。
272 このような差分は通常 -next カーネルに数週間含まれてきたパッチです。
273 大きな変更は git(カーネルのソース管理ツール、詳細は
274 http://git-scm.com/ 参照) を使って送るのが好ましいやり方ですが、パッ
275 チファイルの形式のまま送るのでも十分です。
276 - 2週間後、-rc1 カーネルがリリースされ、この後にはカーネル全体の安定
277 性に影響をあたえるような新機能は含まない類のパッチしか取り込むこと
278 はできません。新しいドライバ(もしくはファイルシステム)のパッチは
279 -rc1 の後で受け付けられることもあることを覚えておいてください。な
280 ぜなら、変更が独立していて、追加されたコードの外の領域に影響を与え
281 ない限り、退行のリスクは無いからです。-rc1 がリリースされた後、
282 Linus へパッチを送付するのに git を使うこともできますが、パッチは
283 レビューのために、パブリックなメーリングリストへも同時に送る必要が
285 - 新しい -rc は Linus が、最新の git ツリーがテスト目的であれば十分
286 に安定した状態にあると判断したときにリリースされます。目標は毎週新
287 しい -rc カーネルをリリースすることです。
288 - このプロセスはカーネルが 「準備ができた」と考えられるまで継続しま
289 す。このプロセスはだいたい 6週間継続します。
291 Andrew Morton が Linux-kernel メーリングリストにカーネルリリースについ
292 て書いたことをここで言っておくことは価値があります -
294 *「カーネルがいつリリースされるかは誰も知りません。なぜなら、
295 これは現実に認識されたバグの状況によりリリースされるのであり、
296 前もって決められた計画によってリリースされるものではないから
299 4.x.y -stable カーネルツリー
300 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
302 バージョン番号が3つの数字に分かれているカーネルは -stable カーネルです。
303 これには、4.x カーネルで見つかったセキュリティ問題や重大な後戻りに対す
306 これは、開発/実験的バージョンのテストに協力することに興味が無く、最新
307 の安定したカーネルを使いたいユーザに推奨するブランチです。
309 もし、4.x.y カーネルが存在しない場合には、番号が一番大きい 4.x が最新
312 4.x.y は "stable" チーム <stable@vger.kernel.org> でメンテされており、
313 必要に応じてリリースされます。通常のリリース期間は 2週間毎ですが、差
314 し迫った問題がなければもう少し長くなることもあります。セキュリティ関
315 連の問題の場合はこれに対してだいたいの場合、すぐにリリースがされます。
318 Documentation/process/stable-kernel-rules.rst ファイルにはどのような種
319 類の変更が -stable ツリーに受け入れ可能か、またリリースプロセスがどう
325 git リポジトリで管理されているLinus のカーネルツリーの毎日のスナップ
326 ショットがあります。(だから -git という名前がついています)。これらのパッ
327 チはおおむね毎日リリースされており、Linus のツリーの現状を表します。こ
328 れは -rc カーネルと比べて、パッチが大丈夫かどうかも確認しないで自動的
332 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
334 それぞれのカーネルサブシステムのメンテナ達は --- そして多くのカーネル
335 サブシステムの開発者達も --- 各自の最新の開発状況をソースリポジトリに
336 公開しています。そのため、自分とは異なる領域のカーネルで何が起きている
337 かを他の人が見られるようになっています。開発が早く進んでいる領域では、
338 開発者は自身の投稿がどのサブシステムカーネルツリーを元にしているか質問
339 されるので、その投稿とすでに進行中の他の作業との衝突が避けられます。
341 大部分のこれらのリポジトリは git ツリーです。しかしその他の SCM や
342 quilt シリーズとして公開されているパッチキューも使われています。これら
343 のサブシステムリポジトリのアドレスは MAINTAINERS ファイルにリストされ
344 ています。これらの多くは https://git.kernel.org/ で参照することができま
347 提案されたパッチがこのようなサブシステムツリーにコミットされる前に、メー
348 リングリストで事前にレビューにかけられます(以下の対応するセクションを
349 参照)。いくつかのカーネルサブシステムでは、このレビューは patchworkと
350 いうツールによって追跡されます。Patchwork は web インターフェイスによっ
351 てパッチ投稿の表示、パッチへのコメント付けや改訂などができ、そしてメン
352 テナはパッチに対して、レビュー中、受付済み、拒否というようなマークをつ
353 けることができます。大部分のこれらの patchwork のサイトは
354 https://patchwork.kernel.org/ でリストされています。
356 統合テストのための 4.x -next カーネルツリー
357 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
359 サブシステムツリーの更新内容がメインラインの 4.x ツリーにマージされる
360 前に、それらは統合テストされる必要があります。この目的のため、実質的に
361 全サブシステムツリーからほぼ毎日プルされてできる特別なテスト用のリポジ
364 https://git.kernel.org/?p=linux/kernel/git/next/linux-next.git
366 このやり方によって、-next カーネルは次のマージ機会でどんなものがメイン
367 ラインカーネルにマージされるか、おおまかなの展望を提供します。-next カー
368 ネルの実行テストを行う冒険好きなテスターは大いに歓迎されます。
373 https://bugzilla.kernel.org は Linux カーネル開発者がカーネルのバグを追跡する
374 場所です。ユーザは見つけたバグの全てをこのツールで報告すべきです。どう
375 kernel bugzilla を使うかの詳細は、以下を参照してください -
377 https://bugzilla.kernel.org/page.cgi?id=faq.html
379 メインカーネルソースディレクトリにあるファイル
380 admin-guide/reporting-bugs.rstはカーネルバグらしいものについてどうレポー
381 トするかの良いテンプレートであり、問題の追跡を助けるためにカーネル開発
382 者にとってどんな情報が必要なのかの詳細が書かれています。
387 あなたのハッキングのスキルを訓練する最高の方法のひとつに、他人がレポー
388 トしたバグを修正することがあります。あなたがカーネルをより安定化させる
389 こに寄与するということだけでなく、あなたは 現実の問題を修正することを
390 学び、自分のスキルも強化でき、また他の開発者があなたの存在に気がつきま
391 す。バグを修正することは、多くの開発者の中から自分が功績をあげる最善の
392 道です、なぜなら多くの人は他人のバグの修正に時間を浪費することを好まな
395 すでにレポートされたバグのために仕事をするためには、
396 https://bugzilla.kernel.org に行ってください。もし今後のバグレポートに
397 ついてアドバイスを受けたいのであれば、bugme-new メーリングリスト(新し
398 いバグレポートだけがここにメールされる) または bugme-janitor メーリン
399 グリスト(bugzilla の変更毎にここにメールされる)を購読できます。
401 https://lists.linux-foundation.org/mailman/listinfo/bugme-new
403 https://lists.linux-foundation.org/mailman/listinfo/bugme-janitors
408 上のいくつかのドキュメントで述べていますが、コアカーネル開発者の大部分
409 は Linux kernel メーリングリストに参加しています。このリストの登録/脱
410 退の方法については以下を参照してください-
412 http://vger.kernel.org/vger-lists.html#linux-kernel
414 このメーリングリストのアーカイブは web 上の多数の場所に存在します。こ
415 れらのアーカイブを探すにはサーチエンジンを使いましょう。例えば-
417 http://dir.gmane.org/gmane.linux.kernel
419 リストに投稿する前にすでにその話題がアーカイブに存在するかどうかを検索
420 することを是非やってください。多数の事がすでに詳細に渡って議論されてお
423 大部分のカーネルサブシステムも自分の個別の開発を実施するメーリングリス
424 トを持っています。個々のグループがどんなリストを持っているかは、
425 MAINTAINERS ファイルにリストがありますので参照してください。
427 多くのリストは kernel.org でホストされています。これらの情報は以下にあ
430 http://vger.kernel.org/vger-lists.html
432 メーリングリストを使う場合、良い行動習慣に従うようにしましょう。少し安っ
433 ぽいが、以下の URL は上のリスト(や他のリスト)で会話する場合のシンプル
436 http://www.albion.com/netiquette/
438 もし複数の人があなたのメールに返事をした場合、CC: で受ける人のリストは
439 だいぶ多くなるでしょう。正当な理由がない限り、CC: リストから誰かを削除
440 をしないように、また、メーリングリストのアドレスだけにリプライすること
441 のないようにしましょう。1つは送信者から、もう1つはリストからのように、
442 メールを2回受けることになってもそれに慣れ、しゃれたメールヘッダーを追
443 加してこの状態を変えようとしないように。人々はそのようなことは好みませ
446 今までのメールでのやりとりとその間のあなたの発言はそのまま残し、
447 "John Kernelhacker wrote ...:" の行をあなたのリプライの先頭行にして、
448 メールの先頭でなく、各引用行の間にあなたの言いたいことを追加するべきで
452 Documentation/process/submitting-patches.rst に提示されているように、そ
453 れは プレーンな可読テキストにすることを忘れないようにしましょう。カー
454 ネル開発者は 添付や圧縮したパッチを扱いたがりません。彼らはあなたのパッ
455 チの行毎にコメントを入れたいので、そうするしかありません。あなたのメー
456 ルプログラムが空白やタブを圧縮しないように確認しましょう。最初の良いテ
457 ストとしては、自分にメールを送ってみて、そのパッチを自分で当ててみるこ
458 とです。もしそれがうまく行かないなら、あなたのメールプログラムを直して
459 もらうか、正しく動くように変えるべきです。
461 何をおいても、他の購読者に対する敬意を表すことを忘れないでください。
464 --------------------------
466 カーネルコミュニティのゴールは可能なかぎり最高のカーネルを提供すること
467 です。あなたがパッチを受け入れてもらうために投稿した場合、それは、技術
468 的メリットだけがレビューされます。その際、あなたは何を予想すべきでしょ
477 思い出してください、これはあなたのパッチをカーネルに入れる話です。あな
478 たは、あなたのパッチに対する批判とコメントを受け入れるべきで、それらを
479 技術的レベルで評価して、パッチを再作成するか、なぜそれらの変更をすべき
480 でないかを明確で簡潔な理由の説明を提供してください。もし、あなたのパッ
481 チに何も反応がない場合、たまにはメールの山に埋もれて見逃され、あなたの
482 投稿が忘れられてしまうこともあるので、数日待って再度投稿してください。
486 - 質問なしにあなたのパッチが受け入れられると想像すること
489 - 要求された変更を何もしないでパッチを出し直すこと
491 可能な限り最高の技術的解決を求めているコミュニティでは、パッチがどのく
492 らい有益なのかについては常に異なる意見があります。あなたは協調的である
493 べきですし、また、あなたのアイディアをカーネルに対してうまく合わせるよ
494 うにすることが望まれています。もしくは、最低限あなたのアイディアがそれ
495 だけの価値があるとすすんで証明するようにしなければなりません。
496 正しい解決に向かって進もうという意志がある限り、間違うことがあっても許
499 あなたの最初のパッチに単に 1ダースもの修正を求めるリストの返答になるこ
500 とも普通のことです。これはあなたのパッチが受け入れられないということで
501 は **ありません**、そしてあなた自身に反対することを意味するのでも **あ
502 りません**。単に自分のパッチに対して指摘された問題を全て修正して再送す
507 -----------------------------------------------------------------
509 カーネルコミュニティは大部分の伝統的な会社の開発環境とは異ったやり方で
510 動いています。以下は問題を避けるためにできると良いことのリストです。
512 あなたの提案する変更について言うときのうまい言い方 -
515 - "これは2000行のコードを削除します"
516 - "以下のパッチは、私が言おうとしていることを説明するものです"
517 - "私はこれを5つの異なるアーキテクチャでテストしたのですが..."
518 - "以下は一連の小さなパッチ群ですが..."
519 - "これは典型的なマシンでの性能を向上させます..."
523 - "このやり方で AIX/ptx/Solaris ではできたので、できるはずだ..."
524 - "私はこれを20年もの間やってきた、だから..."
525 - "これは私の会社が金儲けをするために必要だ"
526 - "これは我々のエンタープライズ向け商品ラインのためである"
527 - "これは私が自分のアイディアを記述した、1000ページの設計資料である"
528 - "私はこれについて、6ケ月作業している..."
529 - "以下は ... に関する5000行のパッチです"
530 - "私は現在のぐちゃぐちゃを全部書き直した、それが以下です..."
531 - "私は〆切がある、そのためこのパッチは今すぐ適用される必要がある"
533 カーネルコミュニティが大部分の伝統的なソフトウェアエンジニアリングの労
534 働環境と異なるもう一つの点は、やりとりに顔を合わせないということです。
535 email と irc を第一のコミュニケーションの形とする一つの利点は、性別や
536 民族の差別がないことです。Linux カーネルの職場環境は女性や少数民族を受
537 容します。なぜなら、email アドレスによってのみあなたが認識されるからで
539 国際的な側面からも活動領域を均等にするようにします。なぜならば、あなた
540 は人の名前で性別を想像できないからです。ある男性が アンドレアという名
541 前で、女性の名前は パット かもしれません (訳注 Andrea は米国では女性、
542 それ以外(欧州など)では男性名として使われることが多い。同様に、Pat は
543 Patricia (主に女性名)や Patrick (主に男性名)の略称)。
544 Linux カーネルの活動をして、意見を表明したことがある大部分の女性は、前
547 言葉の壁は英語が得意でない一部の人には問題になります。メーリングリスト
548 の中で、きちんとアイディアを交換するには、相当うまく英語を操れる必要が
549 あることもあります。そのため、自分のメールを送る前に英語で意味が通じて
555 Linux カーネルコミュニティは、一度に大量のコードの塊を喜んで受容するこ
556 とはありません。変更は正確に説明される必要があり、議論され、小さい、個
557 別の部分に分割する必要があります。これはこれまで多くの会社がやり慣れて
558 きたことと全く正反対のことです。あなたのプロポーザルは、開発プロセスのと
559 ても早い段階から紹介されるべきです。そうすれば あなたは自分のやってい
560 ることにフィードバックを得られます。これは、コミュニティからみれば、あ
561 なたが彼らと一緒にやっているように感じられ、単にあなたの提案する機能の
562 ゴミ捨て場として使っているのではない、と感じられるでしょう。
563 しかし、一度に 50 もの email をメーリングリストに送りつけるようなことは
564 やってはいけません、あなたのパッチ群はいつもどんな時でもそれよりは小さ
569 1) 小さいパッチはあなたのパッチが適用される見込みを大きくします、カー
570 ネルの人達はパッチが正しいかどうかを確認する時間や労力をかけないか
571 らです。5行のパッチはメンテナがたった1秒見るだけで適用できます。
572 しかし、500行のパッチは、正しいことをレビューするのに数時間かかるか
573 もしれません(時間はパッチのサイズなどにより指数関数に比例してかかり
576 小さいパッチは何かあったときにデバッグもとても簡単になります。パッ
577 チを1個1個取り除くのは、とても大きなパッチを当てた後に(かつ、何かお
578 かしくなった後で)解剖するのに比べればとても簡単です。
580 2) 小さいパッチを送るだけでなく、送るまえに、書き直して、シンプルにす
581 る(もしくは、単に順番を変えるだけでも)ことも、とても重要です。
583 以下はカーネル開発者の Al Viro のたとえ話です -
585 *"生徒の数学の宿題を採点する先生のことを考えてみてください、
586 先生は生徒が解に到達するまでの試行錯誤を見たいとは思わないでし
587 ょう。先生は簡潔な最高の解を見たいのです。良い生徒はこれを知っ
588 ており、そして最終解の前の中間作業を提出することは決してないの
591 *カーネル開発でもこれは同じです。メンテナ達とレビューア達は、
592 問題を解決する解の背後になる思考プロセスを見たいとは思いません。
593 彼らは単純であざやかな解決方法を見たいのです。"*
595 あざやかな解を説明するのと、コミュニティと共に仕事をし、未解決の仕事を
596 議論することのバランスをキープするのは難しいかもしれません。ですから、
597 開発プロセスの早期段階で改善のためのフィードバックをもらうようにするの
598 も良いですが、変更点を小さい部分に分割して全体ではまだ完成していない仕
599 事を(部分的に)取り込んでもらえるようにすることも良いことです。
601 また、でき上がっていないものや、"将来直す" ようなパッチを、本流に含め
602 てもらうように送っても、それは受け付けられないことを理解してください。
605 ------------------------
607 あなたのパッチを分割するのと同時に、なぜその変更を追加しなければならな
608 いかを Linux コミュニティに知らせることはとても重要です。新機能は必要
609 性と有用性で正当化されなければなりません。
612 ----------------------
614 あなたのパッチを送付する場合には、メールの中のテキストで何を言うかにつ
615 いて、特別に注意を払ってください。この情報はパッチの ChangeLog に使わ
616 れ、いつも皆がみられるように保管されます。これは次のような項目を含め、
624 これについて全てがどのようにあるべきかについての詳細は、以下のドキュメ
625 ントの ChangeLog セクションを見てください -
628 http://www.ozlabs.org/~akpm/stuff/tpp.txt
630 これらはどれも、実行することが時にはとても困難です。これらの例を完璧に
631 実施するには数年かかるかもしれません。これは継続的な改善のプロセスであ
632 り、多くの忍耐と決意を必要とするものです。でも諦めないで、実現は可能で
633 す。多数の人がすでにできていますし、彼らも最初はあなたと同じところから
641 Paolo Ciarrocchi に感謝、彼は彼の書いた "Development Process"
642 (https://lwn.net/Articles/94386/) セクションをこのテキストの原型にする
643 ことを許可してくれました。Rundy Dunlap と Gerrit Huizenga はメーリング
644 リストでやるべきこととやってはいけないことのリストを提供してくれました。
645 以下の人々のレビュー、コメント、貢献に感謝。
646 Pat Mochel, Hanna Linder, Randy Dunlap, Kay Sievers,
647 Vojtech Pavlik, Jan Kara, Josh Boyer, Kees Cook, Andrew Morton, Andi
648 Kleen, Vadim Lobanov, Jesper Juhl, Adrian Bunk, Keri Harris, Frans Pop,
649 David A. Wheeler, Junio Hamano, Michael Kerrisk, と Alex Shepard
650 彼らの支援なしでは、このドキュメントはできなかったでしょう。
654 Maintainer: Greg Kroah-Hartman <greg@kroah.com>